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想い想われ歪なカタチ
第7章 7
生まれたときから住んでた屋敷を、私は誰より知り尽くしているから
屋敷の者の目を盗んで抜け出すのはそう難しいことではなかった。
行く場所は決めていた。全ての記憶を総動員させて、詳しい場所を思い出した。
大変なのは辿り着き方。
とりあえずタクシーに飛び乗ったのだけど、
移動中、持ってる金額を告げて何処までいけるのと聞いたら、もうここまでだと放り出された。
以前なら、パパのタクシーチケットを渡せば何処までもいけたのに。こうなってはしよーがない。
歩く なんて、もっとも原始的な方法をとらされてしまった。

目的地についたのは陽の暮れ始めたころで、
体はへとへと、足は棒のよう、慣れないことしたから靴擦れにマメができて、もうフラフラだった。
幸いなことに施設長は昔と変わらず(ずいぶん老けてたけど)、お祖父さまにつれられて来ていた私のことも覚えていてくれた。
施設の援助に熱心だったお祖父さまはとっくに亡くなっていたけれど、
お祖父さまの設立した会社が倒産という事態になったことをTVや新聞で知ってて、
心を痛めていたらしい。
事情を(嘘)涙ながらに話すと、アカデミー主演女優賞ものの私の演技に感入った施設長は
私がここで暮らすことを二つ返事で許可してくれた。
それで私は、この施設に居候することになった。
つまりはこういうこと。


「・・・なんで伊吹があそこに・・?

 っていうか、おめー 俺がどれだけ探したと思ってん」
 
「待ってよ!私の話を最後まで聞いてってば!」


 また怒り出しそうな流牙の声を遮って、私は叫んだ。
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