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ひととせの自由
第3章 郷に入っては俺に従え
そんなこんなでこちら『すこやかパンダクリニック』。
私が仲間入り(?)して、早くも一週間が経ちました。
怖い人の息がかかった怖いところだから、どんな恐ろしい方々を診ることになる、恐ろしい日々が始まるのかと思ったら。…意外と平和に過ごせている。
住宅街の中にひっそり佇む診療所だからか、日中の患者さんはご近所の方々がほとんど。しかも子供やご年配、症状も軽い方が多い。
一応、24時間診療受付だけど、今日まで時間外は一度もなかった(榜を掲げてないからなのもあるのかな)。
その様相はまさに『町医者』そのもの。
田中くんは真面目に事務員さんしてるし(患者さんは慣れてるのか誰もビビらない)、四季先生も、見た感じふつうに…いや、むしろ丁寧に診察してるし(心做しか、来院してくる女性の皆様の私を見る視線が痛い?)
確かに大変なのは大変だけど、それは勝手が分からない故のもので、仕事量も気の張りようも、前の病院に比べたら雲泥の差だった。
「ひととせちゃん、田中くんとお昼行っといでー」
…この通り休憩だって取らせてもらえる。前の病院は休憩?何それ美味しいの?だったからなぁ。
パワハラも、先生と初めて会った日からある意味(?)覚悟していたセクハラもないし、むしろ優しくしてくれる。
…私、借金返すためにココに来たのに、こんな好待遇でいいのか?『闇医者』なんて、考え過ぎだったのかな。
小指を詰められた893さんとか、保険金詐欺の死亡診断書を偽造するとか、臓器売買とかとか、、、
怖い人の息がかかった怖いところだから、そんなアンダーグラウンディーな方々を診ることになる、恐ろしい日々が始まるのかと思ったら。…意外と平和に過ごせている日々に、正直、馴染み始めていた。