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ひととせの自由
第3章 郷に入っては俺に従え
「…お疲れ様です」
「!ぁお、お疲れ様です?!」
休憩室は2階。そして、住居も2階。
どういうことかというと、、、河村さんが言っていた『寮』というのは、ここの2階のことだったから。
中村ひととせは現在ここで寝泊まりしております。
──しかも。
「い、いらしてたんですね?!」
「…スミマセン、着替えたくて」
「いえこちらこそ!!一旦出てます!!」
せっっまい4畳半に、田中くんと同室なんですわ…。
刑務所を彷彿とさせる、粗末な2段ベッドに占領された部屋。下の段が彼で、上の段が私。ここだけが私に唯一許された、プライベートな空間。…なんだけど、実際問題全く落ち着かない。
今だって、ベッド縁に腰掛け、さっきまで着ていた白いワイシャツを脱いだ直後の彼とかち合ってしまった。
…いい身体してんだよこれが…。褐色で、きちんと筋肉がついてて…やっぱりガチのタトゥーが刻まれていて。
色んな意味で直視出来なくて、彼の着替えが終わるまで廊下で待つことにした。
「……」
『すこやかパンダクリニック』、2階。間取りは3DK。私と田中くんだけでなく、、、四季先生も住んでいる。
あの人の部屋は、私たちの部屋の向かい。今私の、目の前にあるドアの向こう…だけど、入ったことはない。
お風呂、トイレ、台所、居間。…真昼間なのにこの薄暗さ、全体的な軋み、あちこちに走るヒビ。とにかく…古い。ボロい。
しかしそれでも、ココに来る前に住んでたアパートよりはかなりマシだし、住処としても馴染み始めてる。男2人の中に放り込まれたとしても。…つくづく私、適応力高いな。
…って思ってたんだけど。思い知ったんだ。
私の適応力なんてカスだったよ…ばーちゃん。
「…スミマセンお待たせしました」
田中くんが部屋から出てきた。言葉の反面、表情に変わりはない。変わったのは着てるものの色と…腰に巻かれた前掛け。
「すぐ支度します」