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ひととせの自由
第4章 のべつまくなし
──さて。夢のような時間(点滴ね)も終わり、後片付けを急ぐ私の横で。なおくんと河村さんは、帰り支度を始めていた。
「乗ってく?送るよ?」
「大丈夫ー。マネージャー呼んだから」
…断じて聞き耳を立てていたワケじゃないんだけど。なおくんはこの後早速仕事があるらしい。忙しいんだなぁ。
彼の外観には全く変化はないし、頭の注射痕(微かだけど)も、髪で上手く隠れてる。
どっからどう見ても、『暦 直史』だ。ガッゴイィ…
って、もう1時回ってら。明日も通常営業だけど、私、朝起きられるかしら…(ちなみに四季先生は診察室のベッドで。田中くんは事務室の椅子に腰掛けたまま、安らかに眠っていらした。御二方、無防備な寝顔、ご馳走様でした!)。
「てかさ、今更だけど。そもそもなおくん、顔いじらなくていーんじゃない?まんまでも可愛いよ?」
「やーよ!アタシ昔から目元がみち兄ぃソックリなんだもん」
「えー?正道(まさみち)くんて、そーだっけ?」
「そ・う・よ!あっちの兄貴にはあんま会わない?オーナー」
「ん。みちくんと絡んでたの、俺より前オーナーだもん」
断じて、断じて聞き耳を立てていたワケじゃないんだけど。
さっきからチラホラ登場する『みち兄ぃ』。どうやら四季兄弟は先生となおくんだけでなく、もう御一方いるらしい。
みち兄ぃ。…まさみち。どんな方かは存じませんが、お顔はなんとなーく想像できます。はい 。
「じゃ、お世話さまー。またね」
程なくして、外から車のエンジン音がした。なおくんもスマホをチラ見したし、どうやらお迎えが到着したらしい。
お見送りがてら、スタスタと足早に出口へ向かう背をまじまじ眺めた。あぁ、背中までガッゴイィ…
玄関を開けた先の道路には、住宅街に似つかわしくないハマー様が待機されていた。ああ…ついにお別れか……ん?『またね』?
──そうだよ。メンテナンス!!
なおくんはまたここに来る!しかも恐らく、定期的に!!
『推し』に会えるのが約束されている。それなんて幸運?
「そーだ、60点。アンタ… ひととして?だっけ?」
「ひ…、ひととせ ッス…」
「あっそう。ねえ、ひととせチャン」
突然、なおくんは足を止め振り向いた(名前!名前呼ばれた!!)。そして…私を堕としたあの笑顔で。私を今度は奈落へと突き堕としてくれたのだった。
「アタシ、あんたキライ」