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ひととせの自由
第5章 Ghost White
田中トゥエンティ。田中くんの妹さん。
当時は学生で、読書と子供と納豆が大好きな、真面目で物静かな子だったそうだ。
田中くんにとって妹さんは、唯一の肉親(F国人のママさんは、いつの間にか生死不明になったらしい…)。
妹さんには勉強をさせたい。小学校もろくに行かなかった(行けなかった、んだよね、きっと…)自分のようにはさせない、と彼は頑張った。
だけど、思うようにはいかなくて。
だけど、お金は必要で。
そんな時に出会ったのが…弒髄珠(…だっけ?)。似たような境遇の方々が集まったらしいその場所は果たして田中くんにとって安息地だったか、否か。そこに身を置いたことを妹さんには話していたのかはわからない。
チーム内で上にいくにつれて見返りも増え、妹さんが不自由することはなくなった。しかし同時に、敵も増えた。
そして、事件が起こってしまった。
敵対していたチームが、報復として、自宅に独りで居た妹さんを…あぁ、考えたくもないよ…。
一体何人に傷付けられたのか。深夜、帰宅した田中くんが見たものは。ボロボロになって、真っ暗な部屋の隅で一心不乱に爪を噛む妹さんの姿だった。…やだ、泣きそう。つらすぎる…。
その時田中くんは、救急車を呼ばなかった。
違う。呼べなかった。妹さんが断固として拒否したから。
『なかったことにしたい』
病院へ行ったら、きっと警察へ通報される。
そしたら自分の身に起きたことを話さなければならない。
絶対に嫌だ。…泣き叫ばれても、現実は残酷で。
妹さんは殴られた痕があちこちにあったし、…避妊もされていなかった。『なかったこと』にするためには行動しなければならなかったのだ(もう、やだ。やった奴は地獄へ堕ちろ!)
そこで田中くんは…なんと河村さんに助けを求めた。
(裏社会人同士、既にお付き合いがあったんすね…怖)
『助けるかどうかはドクター次第だよ?』
河村さんの断りを了承した田中くんと、抱き抱えられた妹さんを載せた車は、ある場所へ向かった。そう、『闇医者』へ。
そして事情を聞いた闇医者……四季先生は。
にっこり微笑み、田中くんの弱みに容赦なくつけ込んだ。
『今後僕に絶対服従するなら助けてあげるよ』
田中くんの答えは…言わずもがな。
こうして、四季先生の忠実なお犬様は誕生したのだった。
「助けてくださいお願いします何でもします」