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ひととせの自由
第6章 熊猫首領。
「よし!おっけーだよ」
iP〇d?の画面を暗転させ、抜いたUSBを元通り入れた封筒を、河村さんは四季先生に手渡した。
「次回もガンバッテネ★」の激励付きで。
…じかい。次回。次の回。
ってこたぁまたいずれ、四季先生然り田中くん然りの異常痴態が繰り広げられるってコトですよね?
はあぁ……先生、なにが『私のため』すか。
今さっきの異常痴態も、なおくん♡に嫌われて落ち込んだ私を元気づける云々言ってくれましたけど、真の目的は借金返済じゃないすか(しかも実行役は田中くんだし)。
ぶっちゃけこれっぽっちも嬉しくはなかったけど(だって実行役は田中くんだし2回目)。
それでも…人様が『私のため』に何かしてくれるってこと自体にもう、うっ…すら喜びは感じていたのだ。
「……」
ああ。私ってホント、幸せを感じる沸点が超低い。
ちょっと優しさ(?)向けられただけでコレだもの。
だから蓮哉にも……先輩にも、良いようにされちゃったんだろうな。
もしかしたらなおくんにもそーゆーのが見抜かれて、そんな薄っぺらい女に知った風なこと言われて、気に障ったのかもしれない。
『大切にされないことに慣れちゃダメだよ』
四季先生にもそう言われちゃったけれども。
そもそも『大切にされる』って、どういうコトだろう。
親にはほっぽられたけど、ばーちゃんにはそれはそれは可愛がってもらった。
けど…多分そういうのとは別物な気がする…。
そこで私はハッとした。
トゥエンティちゃん。
彼女のために、田中くんはお犬様になる覚悟を決めた。
それはきっと『大切にされる』ということなんだろう。
そこで私はハッとした(2回目)。
それを言ったらこの河村さんだってそうだ。
蓮哉や、私のナース服が死装束になったお姉さん(頼むから化けて出ないでくれ!)が制裁喰らう羽目になったのは、そもそも河村さんの奥さんを困らせたからで…
奥さんは河村さんに『大切にされる』存在だからだ。
〰〰まぁかなり極端かもだけど。果たして私なんぞを『大切にされる』存在にしてくれる御仁なんて、現れるのか?
そらどっかには居るかもだけど、巡り会える気がしな…
「あ、そーだ。ひととせちゃん」
「ッ、はぃ!?」
四季先生のお声で己の思考の渦を抜けた私は。
2秒後、今度は先生の渦に呑まれ自由を失った。
「僕と結婚してくれない?」