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熊猫彼氏。
第4章 熊猫彼氏。
「オイ」
「ひゃぐっ?!」
腹に喰らった衝撃で目が覚めた。咳込んでくうちに少しずつ頭がクリアになっていく。
え?俺、どうしたんだっけ…
あのあと樹里ちゃんと指定のカラオケ行って、彼女は控え室、俺はお誕生会。お子様たちを全力で接待してママさんたちからも大好評を頂いて。
無事に終わらせ手を振りながら部屋を出た…とこまでは覚えてる。現に着ぐるみのままだし(頭は外れてる)。
え?何?何で?ここどこ?
樹里ちゃんは?
拓けた視界の先は、カラオケでも俺の部屋でもない。なんか変な小部屋?…いや、壁は錆びた鉄みたいなやつで、よく貨物列車が積んでるような…そう、コンテナの中みたいだ。
何で何でなんで???
疑問符ばっか浮かんで全然状況が飲み込めない。
「起きろ」
「む、村上さん!?」
傍らには恐怖の大王…もとい村上さんがいた。
腕組んで仁王立ちして、床に這いつくばったままの俺を見下ろしてる。さっきの腹への衝撃は蹴り飛ばされたのか。痛てぇ…
見上げたその表情は…うわ出たあの目。俺がこの人に初めてボコられた日と同じ目。氷みたいに冷たくて。こちらの生死なんか問わないって感じの。漂う空気まで冷えてる気がする。怒ってらっしゃるよ…それも、最高に。
なななんでなんで?俺何か粗相した?身に覚えないよ?と思ってたら。理由は全く予想外すぎるものだった。
「樹里に何言った」
「、へ?」
「泣きながら電話してきたんだよ。"自分の浅ましさが嫌になった、彼のことももう騙したくない。店辞める"って」
「み、みせ…?」
意味不明。ポカーンと見上げるだけの俺に、村上さんは更に苛立ちをみせた。
「俺の店。vip専用デ◯ヘル」
「で、でり?!」
派遣型風俗店、つまりデリバリーヘ◯ス。いくら俺だって知ってる。村上さんは手広く商売してるから風俗店やってたって不思議じゃない。…が。
「あいつうちのNo1なの。太客何人もいる。損失でかいのわかるよな?」
「え?え…ちょっと待っ…え?」
なになに?この人なに言ってんの?
樹里ちゃんがデリ嬢?俺の彼女が?
「樹里のメンタルケア要員で生かしといたけど。もういい。消えろ」
「え…えっ?!ちょ…っ」
「樹里も逃がさねぇから」
疑問は何も解決しないまま
辺りは闇に包まれた。
『村上さんをガチで怒らせたら消される』
俺が身を以て証明する時が来たんだ…