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熊猫彼氏。
第4章 熊猫彼氏。

さて、一時間ほど経ちました。

ここまでで俺は3曲、樹里ちゃんは9曲歌ってる。全然疲れをみせないどころか10曲目を歌い始めたタフさに苦笑してたら、彼女のグラスが空になってることに気づいた。

「俺、入れてくるね。ウーロン茶でいい?」
「あ…ありがとう!うん、ウーロンで!」

確か2杯目はお茶系。予想通りの返事をもらい、グラスを手にフロント近くのドリンクバーまで向かった。

────

「えーと…あ、あった」

機械の所定の位置にグラスを置き、ボタンを押そうとした直前。背後から聞きたくない聞き慣れた声が聞こえた。

「光太郎?」
「!」

名前呼ばれただけで全身を硬直させる。こんなこと出来るのはこの世に一人しかいない。
それは悲しいかな樹里ちゃんじゃない。
…村上さんだ。

「って、え?お、あ、ぉお疲れ様です?!」

即行振り返って頭下げる。ああもう声も裏返っちゃってるよ。村上さんはドリンクバーの向かいにある喫煙部屋から出てきたところだった。つか、何で居んの?まさか、俺の見張り?!何それ超怖いよ…!

──────

「代わりに入ったの俺らだもん」

目的をなくしたその部屋には、村上さんとそのお連れの方々が入られたそうだ。隣なのに全く気づかなかったよ…

お誕生会らしく部屋はパーティールーム。普通の部屋よりも広くて床もフラットシート。長身の村上さんには足伸ばせるし確かに楽かもね。

って、そんなことどーでもいい。
今がチャンスじゃないか。頑張れ俺!!


「…あ、あああのっ」
「なに」
「ちょ…ちょちょっとききき来て下さい!」

100年分くらいの勇気を振り絞って、村上さんを喫煙部屋に連れ込んで後ろ手にドアを閉め二人きりになった。どうしても、どうしても確かめたいことがあったから。そう。

─何で樹里ちゃんを知ってるんですか─

「で、なに」
「ななななん、なんで、じじじ、なん…っ」

容赦なく刺さる「早く言え」という目線。いくら怖いったって我ながらキョドりすぎだろ…舌が全く回らない。

「!オイちょっとそこ退け」
「え、ぉわっ?!」

突然慌てた様子で俺を突き飛ばし、ドアを開けた村上さん。

「話があるんです」の呼び掛けには「ちょっと待ってろ」との返事(すげー煩わしそうだった怖い)

俺は村上さんの後を

反射的に追いかけた→次頁
追わずに言われたまま待った→29頁
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