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熊猫彼氏。
第4章 熊猫彼氏。
「ひとりで出歩かないで」
村上さん、ドリンクバーの前で何やら独り言いってる…訳なかった。隠れて見えなかっただけでちゃんと相手がいた。村上さんよりかなり小柄であどけない感じの、可愛い女の子。…ん?この方はまさか?!
「ごめんなさい…飲み物がほしくて」
「ボンクラは」
「歌ってらっしゃいます」
「…。使えねぇ…」
「あのー…村上…さん…」
恐る恐るかけた俺の声に、お二人はこちらを向いた。『テメー待ってろっつったろ』と物語る険しい表情の村上さんの向こうには、グラスを両手で持ちキョトンとした顔の…そう、俺が償いの日々を送ることとなったきっかけを作った張本人(?)村上さんの彼女様がいたのだ。
「ああ、この子俺の店のバイトで──」
「はじめまして、本田ヶ谷さん!わたし…」
彼女様はにこにこしながら自己紹介してくれたけど…その脇からの『テメー要らねぇこと言うなよ』と釘を刺してくる眼差しが痛すぎて全く頭に入ってこなかった。
「オレンジジュースでいい?」
「あ…ありがとうございますっ」
そんな彼女様の手からグラスを取り、飲み物を注ぐ村上さん。…驚いた。この人こんな優しい顔と声できたんだ。
彼女様のこと、本当に好きで大切なんだなって伝わってきた。改めてあの日自分がしたことを振り返ってみる。…そりゃキレるよな…あぁ、本当にごめんなさい…
「光太郎くん!」
後悔と自責の念に苛まれた直後。聞き慣れた、もっと聞いてたい声が聞こえた。樹里ちゃんだ。
「戻ってこないから心配したよ」
ホッとした顔でこちらに歩いてくる樹里ちゃん。
村上さんとその彼女様には悪いけど、やっぱり樹里ちゃんの方が百億万倍かわいい。いやそれ以上かな。
なんてニヤケかけたら。『どうして村上さんが樹里ちゃんを知ってるのか』その謎が突然解き明かされた。
「あれっ?オーナー?」