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熊猫彼氏。
第4章 熊猫彼氏。
なんてことない。村上さんは樹里ちゃんのバイト先のオーナーだった。
しかも、ふたりは俺よりも長い付き合いだって。あまりにもあっけない(?)事実に拍子抜けしてしまった。
そんな樹里ちゃんも彼女様とは初対面だったようで。女の子同士はじめましてを交わしあってて微笑ましかった。
……いや。ていうか……
「樹里ちゃん知らないって言ったじゃん!」
「ごめーん、もうずっとオーナーって呼んでたから忘れてた」
「俺言ったじゃん!死ぬほどイケメンで…」
「オーナーのどこがイケメンなの?」
キョトンと小首を傾げる樹里ちゃん。ああ、こんなとこでも彼女の独特の感性とド天然っぷりを発揮されるとは思わなかった。可愛いなぁ…
いやいやそれどこじゃない!彼女様の機嫌を損ねたのではと慌ててそちらを伺ったけど…
「本田ヶ谷さんたち、仲良しなんですね…っ」
当の彼女様はくすくすと天使のように可愛らしく微笑んでいた。いや今さりげなくアナタの彼氏、貶されましたが?…い、いいの?
彼女様からなんとなく樹里ちゃんと同じニオイを感じつつ、とにかく俺は謝った。
言うまでもなく村上さんの地雷は彼女様だ。
大狼藉を働き『生かされている』状態に陥った今、彼女様への粗相はもう許されない。俺はもちろん、樹里ちゃんもだ。
だってほら現に今だって、村上さん彼女様の手をしっかり握って離さないもん。
「そーだ!光太郎くんに仕事言いつけたのオーナーなんだって?今日私の誕生日で光太郎くんだってせっかく休み取ってくれたのにー。ひどいよ!」
「ごめんね、忘れてたの」
眩暈を覚えるくらいの樹里ちゃんと村上さんのやりとり。二人はかなり気心知れた仲らしい。村上さんは苦笑しながら樹里ちゃんの頭撫でてるし。
戦う前から白旗振ってる状態の俺は嫉妬しないけど(相手がこの人の場合限定ね)彼女様は大丈夫かな…!?ハラハラしながらチラ見したら。
「え?そうなんですか?樹里さん」
「そうなんですよー!この人ひどいでしょ?」
「本当に!お休みで、しかもお誕生日なのに」
余計な心配だったみたい。なんか女子同士盛り上がってるし。
その後も会話に花が咲き、二人が同い年なことや料理好きって共通点もあってすっかり意気投合してた。携帯のメアドとかも交換してたし(彼女様がガラケーで驚いた)女の子すごい…。