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熊猫彼氏。
第4章 熊猫彼氏。
「で、話ってなに」
これまでの人生で一、二を争うくらいの緊張に加え、嫌煙家にはなかなかつらい喫煙部屋での待ちぼうけ(俺しか居なかったけどニオイがもうダメ)を喰らっておよそ5分。再び村上さんが姿を現した。(ドリンクは先に樹里ちゃんに届け、トイレと偽って出てきた)
村上さんはさっき出て行った時とは違い、既に普段通り。どんな理由で出てったかは知らないけど、特別ご機嫌ナナメな様子はない。
でも表情は険しいから『さっさと済ませろ』とお思いなのは間違いない。──うん、怖いけど単刀直入に言おう。そう判断した俺は深呼吸し『それ』を口にした。
「なっ何で樹里ちゃんを知ってるん」
「うちの従業員だから。河村樹里」
「へっ」
あまりにも拍子抜けする即答。じ、従業員?
何それそんなことあんの??
「彼女、よく俺にお前の惚気話してくるよ。ちょっと頼りないけど、優しくて大好きって」
「……」
新しい煙草に火をつけながら、村上さんは淡々と話してくれた。どうやら『人質用』に秘かに調べられてたわけじゃなかったようでひと安心。ヤンキー漫画の読み過ぎだよね…。
疑問は解決し、その上樹里ちゃんが陰日向なく俺を愛してくれてるのもわかった。なんだ、万々歳じゃん。世間の狭さと、村上さんとのご縁(皮肉ね)には驚いたけど。
「村上さん、カフェもやってんすね!」
へにゃっとした笑顔でそう言った。とんでもない緊張から解放され、全身脱力したから。
そういう状態って一番危ない。つい気持ちまで緩んで、余計なことしたり言ったりして墓穴掘る。俺が一番体感してんのにね。本当バカだ。
「やってないよ」
「え?でも樹里ちゃんのバイト先、駅前の…」
「着ぐるみHしたがったろ、樹里ちゃん」
心臓止まるかと思った。ななに突然?
なんだって??今なんて言いました?
「Hに貪欲だからね、彼女」
「む、むらかみさん…?!」
なに?この人なに言ってんの?独り言?
まさか樹里ちゃんのことディスってる?
それならさすがに俺もキレる。怖いなんて言ってる場合じゃない。大好きで大切な彼女バカにされ平気でいられるほどヘタレじゃない。
「だから不動のNo1なんだよ。樹里は」
常に探求心と研鑽を忘れないからと、村上さんは締めた。どうやら褒めてるようだけどこの内容…まさか…
「…村上さんの店って…」
「デ◯ヘルだけど」