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熊猫彼氏。
第4章 熊猫彼氏。
派遣型風俗店。即ちデリバリーヘ◯ス。
ご指名受けた女の子が客の自宅やホテルに行き『そういうこと』をするのがお仕事。いくら俺でも知ってる。
完全会員制である村上さんの店の顧客は医師や官僚、教師、社長など社会的ステータスのある所謂vip揃い。そして樹里ちゃんはそこのNo.1。
「樹里はプロだよ」
さっき言った探求心と研鑽に加え、Hが好きなだけでなく『もてなし』の心構えも忘れない。
ベタ褒めされても複雑だった。当たり前じゃん!!いくら本番なしでも、大好きな女の子が別の男に触れられて別の男のチ◯コに触れて…しゃぶる?考えただけで発狂しそうだ。
ほんと、着ぐるみなくてもパンダみたく獣化しそうな……
「オイ」
「痛てっ」
容赦ないデコピンが炸裂し目から火花が散った。『俺の話聞け』とゆー戒めだ。痛ってぇ…でも少し落ち着いた。
「樹里はプロだって言ったろ」
あくまで『仕事』ビジネス上の性的行為。
ある種の『愛』はあるが一線は超えない。
「…テメーはマシなんだよ」
村上さんの表情に影が差す。すぐ消えたけど。
よくよく聞けば樹里ちゃんが村上さんの店で勤め始めたのは一年半前。家庭の事情で学費の捻出が難しくなり、途方に暮れていたところに紹介を受けたそうだ。
正直Hは嫌いではなかったし、働き始めたら様々な客に出会えて勉強にもなって楽しくなった…とか。
(ちなみに村上さんが俺のアパートのオーナーになったのは、経営&新店舗の事務所や女の子の寮として使いたい為。俺が住んでたのは知らなかったそうだ)
…それにしても。
「…なんで俺に教えたんすか…この話」
「八つ当たり」
「何すかそ…」
言いかけたところでハッとした。
村上さん、樹里ちゃんの事好きなんじゃ…!?
……って、それはないか。
この方には歴とした彼女様がいる。
「あ…」
そして、俺にも。
ドア窓の向こうに見えた樹里ちゃんの姿。
喫煙部屋の前を通り過ぎ、その先のトイレに向かった彼女はいきなり男便(!)を覗き込み始めた。
きっとなかなか戻らぬ俺を心配しての行動だ。
端から見たら怪しいけど…。そのいじらしさに口元が緩んじゃう。
そうだよ。樹里ちゃんは、樹里ちゃん。
無力で馬鹿で間抜けな俺だけど
ああ守んなきゃ。何があっても。
俺、この子すごく好きなんだよ。
【熊猫彼氏。/完】→次頁