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熊猫彼氏。
第2章 村上さん。
「明日11時から、駅前のカラオケ屋でお誕生会開くお子様とママグループが居るんだよ。お前そこにコレ着て参加しろ」
「え…ええっ??」
聞けば、お子様がたは2歳~6歳の男女が5人。
要するに俺はサプライズゲストというか盛り上げ役というかボコられ役というか?とにかく彼らを楽しませれば良いのだ。
元々子供は好きだし、今までの『償い』からしてみればなんて健全な内容なんだろうか。しかも…
「グループは14時には解散予定だし、控え室用に隣の隣の部屋押さえてあるから。彼女そこで待機させてればいいだろ」
「……」
3時間きっちりやりきれば、俺は解放される。
3時間きっちりやりきれば、彼女といられる。
長時間一人にするのは忍びないが、何かあったらすぐ駆けつけられる近さ。
それに彼女は歌うのが好きだ。一緒にカラオケ行けば、ほとんどマイクは独占される。一人でもあまり苦にはならなさそうだ…
俺の心は決まった。
「や、やります!」
「いや、最初から拒否権ねぇけど」
はい、そうデスね。
────────
「明日遅れんなよ」
「11時っすよね!了解っす!」
路肩に停められている村上さんの愛車。純白のレ○サスrx様までお送りする。乗り込む前に村上さんは言ってくれた。
「彼女、大事にしろよ」
「、はいっ!お疲れ様っした!」
車が角を曲がるまで見届けた後、部屋に戻るため歩き出す。不思議と心は軽かった。
彼女連れを提案してくれるなんて。怖い怖いと思ってたけど、実はいい人なのかもしれない。
もしや、そろそろ許してくれようとしてるのかも!あ、早速樹里ちゃんに知らせないとな。鍵を開け中に入る。直後、全身に戦慄が走った。
『樹里ちゃんも連れて来ていいよ』
村上さんは樹里ちゃんを知ってた。
俺は今まで一度も教えたことない。
『だ い じ に し ろ よ』
あの言葉の持つ本当の意味と恐ろしさ。
いい人な訳ねーよ。俺馬鹿じゃねーの?
俺はあの人の『大事な子』にヘマしたんだ。
あの人これっぽっちも許す気なんかない。
あくまでも俺は『生かされている』だけ。
しかもそれには樹里ちゃんも含まれたのだ。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…」
膝の力は抜け、その場に座り込みただ震えた。
愚かな俺は今全てを思い知らされたのだった。