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熊猫彼氏。
第3章 樹里ちゃん。

「光太郎くん?」

部屋の隅で毛布被って、ガタガタ震えて過ごした一夜が明けて、朝の玄関。

今俺の腕の中に居て、潰してしまわないように細心の注意を払っているのは他でもない。マイハニー樹里ちゃんである。

昨日の村上さんとの一件があってからとにかく不安に駆られてしまい、樹里ちゃんに電話やL1NEをしまくった。『今どこ?』『何してるの?』『誰といるの?』って。既読付くまで生きた心地しなかった。

いや、わかってたんだよ?昨日の彼女は一日バイトで、夜は女友達と誕生日の前夜祭(という名の女子会)だったって。なのに俺があまりにも連絡しまくるもんだから逆に心配させちゃって。『何があったの?夜の予定やめてそっち行くね』って電話きて慌てた。

『ちょっと淋しくなっただけ。ホントごめん』って弁解する俺に『なにそれー。"彼氏、束縛激しいねw"って笑われちゃったよ』って苦笑いした樹里ちゃん。

電話の向こうの表情を想像しただけで、可愛いなあ、好きだなって気持ちが込み上げた。そしてそれ以上の『ごめんね』って思いも。

彼女は始発に乗り、朝イチで俺のアパートを訪ねて来てくれた。その優しさが有難かった。愛おしかった。
ああ、俺ホント何てバカなことしたんだろ…

「どうしたの?本当に…」

抱き締めた腕から、女の子特有の柔らかい感触が伝わってくる。甘い匂いも鼻をくすぐる。香水とか何もつけてない筈なのに。

「ごめん、ほんと…ごめん」
「?あ、ねえ。今日のことでしょ?いいってば」

そう。昨日それも話したんだ。急遽バイトが入ったって事にして。

『誕生日なのにごめんね』と謝る俺に対し
『仕事だもん』と笑顔で返してくれた彼女。

「ねえ、面白いバイトだよね!着ぐるみでお誕生会盛り上げるって。光太郎くんにぴったりだよ」

彼女は密着してた体をちょっと離し、俺を見上げた。

樹里ちゃんは笑うと目がなくなる。
満面の笑顔がめちゃくちゃ可愛い。

「私まで一緒に行けて、歌いながら待ってられるなんて、最高♪」

性格も陽気でほがらかでさあ。
絶対ネガティブ発言しないの。

俺、この子すごく好きなんだよ。
ああ守んなきゃ。何があっても。


「高校の時なんか、8時間居たこともあるんだよー?友達とね」
「あのさ…樹里ちゃん」

そのためにも、これは確かめておきたかった。


「村上さん…て、知ってる?」
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