この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BeLoved.【蜜月記】
第15章 【裏】BeLoved.
「もう半年になるのねぇ」
歯科助手としての一日を終え、更衣室で制服から私服への着替えも済ませた頃。わたし──朝比奈未結は、院長である羅々先生から声をかけられ、院長室に招き入れられた。
「おばあさまが亡くなられてから」
「あ…はい、あっという間でした」
中央に置かれたソファセットに、向かい合って腰を下ろして。先生の言葉に頷いた。
半年前、わたしは。唯一の肉親だった祖母を闘病の末に亡くし、天涯孤独になった。
通夜、葬儀、火葬、その他諸々の手続きを経て、四十九日までも終えた、今頃。実感が湧いてくる…というか、疲れが出てくる頃ではないか、と。先生は心配してくれた。
「ここでは明るくしてくれてるけど…大丈夫?」
「……」
羅々先生は、いつも優しい。
闘病中からずっと気遣ってくれて、遅刻や早退も可能な限り赦してくれて…逝ってしまった後も、忌引休暇を多めにくれた。
今だって、無理に明るく振舞っているのではと思ってくれている。本当に、感謝してもしきれない。
「…ありがとうございます。わたし、大丈夫です!」
「そう?何かあったら、遠慮なく言うのよ?」
「はい!…それじゃ、お先に失礼します」
半信半疑な様子の先生に一礼し、院長室を出て──歯科医院を後にし、家路を急いだ。
ありがとうございます、羅々先生。
だけどわたしは・・・その・・・
本当に大丈夫なんです・・・。
「た、ただいま…」
なぜなら、わたしには──・・・
「おーおかえりー」
「おかえりなさい」
家政夫さん『たち』がいるから。