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BeLoved.【蜜月記】
第5章 リビングはセックスをする場所ではありません!

「んなもん誰が決めたんだよ」

彼は眼光炯々そう言い放った。わたしの……真下で。

───────☙

遡ること30分ほど前。わたしはベランダで洗濯物を干していた。雲ひとつない晴天に恵まれ、陽の光と爽やかな風の下はためく洗濯物を眺めては悦に入っていた…ら。

「あー、今洗濯中?」

背後でガラスサッシの開閉音と間延びした声がした。
振り向いた先には…流星さま。日曜日なのでこの時間でも在宅している彼(ちなみにもう御一方はお仕事のため不在)は、寝間着に寝癖のついた髪に寝ぼけ眼。起きたばかりなのね。昨夜も遅かったからな…

「煙草吸おーと思ったんだけど。やめるわ」
「あ…、大丈夫ですよ!今こっち、風上ですし」

煙が洗濯物につくのを考慮して、引き返そうとしてくれた彼を、こちらから引き止めた。

何もかも広くて大きいこの家では、ベランダすらも例外ではなくて。物干しスペースがある端と、彼らが自主的に(?)決めた喫煙スペースがある端とは、距離もある。

「じゃー、遠慮なく」
「はいっ!…あ…」

煙草の前に、と。わざわざわたしの方に近付いてキスをしていく。…なんでこういうことできちゃうんだろう。

したいようにしているだけなのに、いつもこちらが引き寄せられて、夢中になって。気付いた時には置いていかれて。本当に、この人には敵わない。昼も…夜も。

〰️〰️ああ、だめだめ。仕事に集中しよう!自分を奮い立たせ、残りの作業を進めていった。


─────────☙


全て干し終えて、ふと彼の方に目をやれば。彼は手すりに前のめりでもたれ掛かり、地上を見下ろしていた。
…何してるんだろう。煙草はとっくに終わっているようなのに。不審に思い、隣に並び尋ねてみた。

「あのさ、見える?あそこ」
「?」

指さされた先。道路を挟んだ向かいの、ビルとビルの間。よく目を凝らしてみると、狭い通路に置かれた小型のコンテナの上に、一匹の黒猫がいた。…よく見つけたなぁ…。丸まってるし、可哀想だけどゴミ袋に見えなくもないのに。

わたしたちの存在なんか知りもしない猫は、伸びをしたり毛繕いをしたり、再び丸くなったり、なんとも自由に過ごしている。…なんか…

「流星さまみたいですね」
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