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BeLoved.【蜜月記】
第5章 リビングはセックスをする場所ではありません!
「は?」
──思ったことがまんま口に出てしまった!
「やっ、そ、その、り、流星さまほら、普段から猫っぽいですから?!きき気まぐれだしマイペースでスシ?! 」
「……」
慌てて取り繕うも…慌てているせいで全く叶わない。
寧ろどんどん自分を窮地に追い込んでいる気すらする…
…ほら!わたしを見つめる彼の目も鋭さを増し…
「にゃあ」
「!!!」
なんて?!
「えーだってほら、未結が俺のこと猫とか言うから」
それらしくしてみた。と。普段通りしれっと言ってのけられて。どうやらご機嫌は損ねていなかったようだけど…不意打ち、いや、今のはわたしにはれっきとした『返り討ち』。し、衝撃で声が出せない…。
「まーでも、あの猫が俺みたいってのは当たってるよ」
そんなわたしに構わず彼は話し続けた。
「あの猫さ、待ってんのよ」
「?」
「みえねーと思うけど、あそこから5mくらい先に、轢かれたんだね。潰れた猫がいんの。多分あれ、連れ合い」
彼の指が指し示す方に視線を向けるも…当然何も見えない。違う。『視え』ない。
「もう来ない連れ合いの為にその場に留まってさ。ちょっと前の俺みたいじゃん」
「あ…」
なんて事ない口調で言われても、大きな手に頭を撫でられても。…なんだか切なくなってしまって。
何と言ったらいいか、間抜けなわたしには見当もつかなくて。さっきとは全く違う意味で声が出せなくなってしまった。
「あ、どっか行った」
コンテナを飛び降りた黒猫が、通路の奥に姿を消すと同時に、彼の手も頭を離れた。今日はこんなに暖かいのに、しんみりした空気が流れる。それを打破したのは…もちろん、我が道をゆくこの人だ。
「なー、洗濯終わった?」
「あ…はいっ」
「じゃ、中入ろーぜ」
のんびりした口調で頭を掻いたぐらいにして。何事も無かったかのように歩き出した背を追いながら、その気まぐれ…いや、切り替えの速さに安堵したのだった。
リビングに戻り、サッシを閉めるまでは。
「しよ、未結」