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BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ
「──で、的確に急所狙ってくるんだよね。超痛ぇ」
「わかる。寝てる時のが鋭いって意味わかんねーな」
「……」
助手席に凭れ、彼らの会話をぼんやり耳に通しつつ。流れ去る景色を眺めながら思い返した。
免許取得のご褒美の体でやってきた、今回の旅行。
彼らは激務、重責、不規則。そんな日常から、少しでも解放されてほしい。『わたし』がしてあげたい。
守られて、愛されるだけ。そんなわたしから少しでも脱却したい。変わりたい。それが真の目的だった…けど。
『非日常』を感じさせられたのはわたしの方で。
結局、彼らは彼らのままで。
わたしは、わたしのままだ。
「……はぁ…」
何となく胸に燻るわだかまり。
俯き、無意識に溜息をついてしまった。
──すると。
「未結さー」
流星さまの間延びした声が飛んできた。…いけない!
参加してないとはいえ、会話の最中に溜息をつくなんて失礼過ぎる。慌てて顔を上げ謝罪した。
…しかし、声の主は。
平然とした様子で続けてくれたのだった。
「おまえ今回、なんか思うとこあったみてーだけど」
「え…」
「おまえはそのまんまでいーよ」
「!!」
運転中なので彼がこちらを見ることは無い。だけど彼の言葉は、わたしの胸のわだかまりを、まっすぐ突いた。
「間抜けじゃない未結なんて、不気味じゃん」
「ぶき…っ?!」
「未結ちゃん」
抗議しようとした矢先。もう一人の彼の手が、後ろからそっと伸ばされ頭を撫でた。
「ボンクラの言い方は悪いけど、そういうこと」
「……」
「未結はそれでいいの」
この位置からでは、手の主の表情は伺えない。だけど大きな掌の温かさは…胸のわだかまりを解いていく。
──ほら、やっぱり。
彼らはどこまでも彼らのままで。
わたしも、わたしのままだ。
……『それでいい』か。
「…また…、お出かけしましょうねっ、三人で!」
彼らは声を揃えて答えてくれた。…たぶん、真顔で。
「絶対やだ」