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BeLoved.【蜜月記】
第10章 流麗荒亡 2

「おまえやっぱ、訳わかんねーわ。未結」


恐怖でヘタり込んだわたしにも、容赦なく。目の前の彼は心底呆れたような目で見下ろし言い捨て、溜息をついた。
…いや、それはわたしの台詞ですよ。流星さま…


────────❧


「…あぁぁ…」


TVの電源を切ったリモコンをテーブルに置き、溜息をついた。


──現在、23時過ぎ。ちなみにご主人さま方は、お二方とも今夜は帰宅しない。家はわたし独りだ。

なので今の今までリビングの大画面を占領し、邪魔されることなく(いや、普段からされないけど!)映画を鑑賞していた。


存在を知ってから、見たい見たいと思っていたネット配信限定映画。現世に恨みを残した怨霊が現れ、人間を次々に呪い襲うという、正統派ホラー。

心理的、精神的にくる怖がらせ方で定評のある若手監督さんの最新作らしい。
怖がりのくせに怖い話好きなわたしは、案の定興味をそそられ…終わりまで見入ってしまった。


…そして今はそれを少し…いやかなり…後悔している。

おもしろかった。確かに面白かった。でもそれ以上に…
怖かった。


「お…お風呂入ってから見ればよかった…」


彼らの不在をいいことに、欲に負けて。
明日の準備も自分の支度もそっちのけで、TVをつけた。

…その報いだったのか。
作中で一番怖かったのは、よりによってお風呂場のシーンだった。


いわく付きの一軒家に一人暮らしすることになった主人公。
残業のせいで退勤が深夜になってしまった上に、突然の雨に見舞われて。帰宅早々風呂に入ろうと洗面所に向かった。

ずぶ濡れになった服を脱いでいると、何故か耳のすぐ側で『ぴちゃん…、ぴちゃん』と水の音がして。

不審がりつつふと洗面台の鏡に目をやると、背後にある浴室のドア…磨りガラスの向こうに人影が現れ…長い黒髪の女の姿が──




「あ"あ"あ"あ"あ!!やーめーてー!!」


叫び声と一緒に首を左右にブンッブンと振った。お願いだからやめて。思い出さないで。わたしの脳みそ。


『入浴しない』という選択肢も、あるにはある。

でも、選びたくない。日中は動き回ったから汗もかいたし、それに…正直、この後色んな意味で何が起こるかわからない。

極力ササッと済まそう。お、思い出しそうになったら、九九でも唱えて気を紛らわせればいい!

そう決心し、浴室へと向かった。
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