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第6章 6
「ちょっ・んぐん!・・・っ・ふぐ・・」


粗野な扱いに批判の声を揚げようとした紗織の唇を、男の唇が塞いだので、
くぐもった声と蠢かした舌が、男の咥内へ吸い込まれていった。
男が、貪るように紗織の唇に吸い付く。
いつもより荒々しいキスに、紗織は瞼の裏で火花を見た気がした。
体を締め付ける男の腕には、痛いほど力が込められて苦しい。
男の手で乱暴に浴衣の帯を解かれ、あっという間に身体を はだけさせられる。


「あ・・・いやっ!・・・やだ・やだっ」


例え無駄だと分かっていても、紗織は男の腕の中でもがいて抵抗した。
それも虚しく、男に床に組み敷かれて胸を覆っていた両腕が
強い力で開かされて押さえつけられる。

紗織の力を無力化する、男の絶対的な腕力と支配が吹き荒れ
身の凍えるような恐ろしさで、胸が罅割る思いがする。


「まだそんな事を言っているのか」


男の冷淡な口調が耳に刺さる。


「だって・ だっ・・て・・・」


紗織は体を強張らせ、顔を横に伏せた。
温かい液体が、目から目へ伝うのを感じた。


(うわっ・・・何泣いてるんだろ、私
 いやだ、みっともない。 お願いだから涙、引っ込め)


目を固く閉じて唇を噛み、どうかしたら込み上げてきそうな嗚咽を堪えた。


「すぐ泣くやつだな。お前は」


男が、少し呆れたような声で言った。
紗織は涙を零しながらも、悔しさと怒りを込めた目で、正面から男を睨みつけた。
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