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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第4章 魔王④
「私はお前たち人間が、魔と呼ぶ者たちの長だ。お前たちは私を……」

 男の唇が、フィーネの耳元に近づく。
 低い囁き声が、鼓膜を震わせた。

「魔王と呼ぶ」

 次の瞬間、彼の背後から異質な力が洩れだした。

 フィーネは魔族の力を見たことがない。
 しかし、本能が警告してくる。

 今感じているのは、あくまで力の片鱗。
 本来、人間が太刀打ちできる存在ではないと。

 心臓が緊張のために激しく脈打ち、口の中がカラカラになる。肌は粟立ち、足元から冷気が這い上がるような感覚が襲った。

 すぐそばにある死の恐怖が、フィーネの身体をこわばらせる。

 目の前の男に恐怖しながらも、頭の中の冷静な部分が納得の声を上げた。

(ああ、だから……だから神官たちも……)

 聖地にいる神官の中で、男に対抗できる者は誰一人いないだろう。

 ただ一人、女神に認められし勇者を除いては。

 その時、綺麗に曲線を描く彼の眉が寄った。
 困惑しているのだろう。魔の長にしては、どこか人間らしい表情に見える。

「フィーネ、すまない。優しくは……出来なさそうだ」

「え?」

 次の瞬間、寝衣の胸元が魔王の手で引き破られた。
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