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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第9章 アンジェラ①
 女性に怒りをぶつけられ、男の美しい顔が気まずそうに歪んだ。これ以上の説教を拒むように、彼女から視線を逸らす。

 あの魔王が。
 強力な力を持つ神官たちを無力化した魔王が。

 小太りの中年女性に、気圧されている。

 フィーネが驚くには十分過ぎる光景だった。

 視線を反らす魔王に対し、女性は呆れたように大きくため息をつくと、両腕を組み、ますます眉間の皺を深くした。

「まったく、フィーネ様が不憫すぎるじゃないですか! まあ確かに? 百歩譲って、あんなに薄い布の服でしたから、力加減を誤って破れたとしてもですよ? 両手を縛って自由を奪うなんて……」

「いやだから……」

「だから言い訳は聞きませんよ! 身を清めた際、私が気づいたから良かったものの……ただでさえご説明もせずに、そんな酷い交わりで……フィーネ様の心に癒えない傷が残ったらどうなさるおつもりですか! ほんっと、最低ですよ。男として最低です!」
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