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M嬢のいる風景
第6章 翼の独り言
 情にほだされて元鞘になれば繰り返しになるし、近く居ればそのうちに暴力的になるのはわかっていましたから。

 私を育てた大人たちが、みな、そうでした。

 だから、私は日本中の事を知っています。本当に色々な街に居ましたから。
 今は、久しぶりに関東にいます。都心ではない、でも都心から遠くない場所に居ます。

 よく、映画とか、テレビとかで、誰にも愛されずに独りで生きてきたヒロインが、愛してくれる男や仲間に出会って、落ち着いた暮らしを始めて終わりなんてストーリーがあります。
 あの展開がよくわからないのです。理解できないのです。

 なんで、ああやって落ち着いて、屈託なく笑えるのかがわからないのです。

 人を上目遣いに見てきた人間が、ああも簡単に変われるなんて「絶対に嘘」と思ってしまいます。
 少なくても、私には無理です。

 どんなに愛情みたいにものに包まれて、すべてを赦されたとしても、私はあんなに無邪気になれないです。
 身に付いたご機嫌伺いセンサーは死ぬまで止まることはないと思います。
 もし、私がヒロインだったら、その場から逃げ出しておしまいです。

 あの有名な「ティファニーで朝食を」という物語は、映画では男と一緒に暮らし始めてハッピーエンド?だったけれど、原作の小説ではヒロインは姿を消して終わりなんだそうです。
 それを知ったときに、私は「なんて良心的!!!」と感動しました。
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