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真紅の花嫁
第4章 萌黄の令嬢





半年ほど前のことだ。

久しぶりに朝山紫郎の〈夕景〉を展示した。

ある日、その絵をじっと見入っている少年がいた。
平日の午後。館内は人も少なかった。

定例の企画会議を終えた後、展示状態の点検に回っていた真波は、すぐにその少年に気づいた。

少年といっても、高校生くらいの年頃。
午後の早い時間で、学校をさぼったのかな、と思ったのを覚えている。

ほっそりとした背中が、どこか寂しげだった。


真波を見て、美術館の人間だと分かったのだろう。
少年はいきなり話しかけてきた。

「ねえ、この朝山紫郎って、どんな人?」

友達としゃべるような口調である。
特設展ではないため、キャプションには紫郎の生没年くらいしか記されていなかったのだ。


それが桐原亮との出会いだった。


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