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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
「ルナがお茶とお菓子を持ってきてくれるから、それが届いてから話そう。はやく来てくれるといいんだけど……」
 そう言ってラウルはお腹をさする。ラウルに食欲があることに安堵するのと同時に、昨日ぐったりしていたとは思えない回復力に感服する。いくら優れた薬を飲んだとはいえ、常人ではここまではやく回復することはないだろう。
「食欲があるようでよかった」
「野菜スープかリゾットしか食べさせてくれないんだ。オネストは、僕を重篤患者か何かと勘違いしているらしい」
 やれやれと肩をすくめるラウルに、カミリアは苦笑する。昨日自力で歩けなかったのだから、オネストが消化のいいものを食べさせようとするのは、当然だろう。

 ドアがノックされ、ラウルが返事をするとドアが開く。ルナはケーキスタンドやティーポットを乗せたワゴンを押して入室すると、テーブルにケーキスタンドを置き、紅茶を淹れてくれる。ティーポットをケーキスタンドの隣に置くと、一礼して部屋を出た。
「さっそくいただこうか」
 そう言ってラウルはテーブルセットへ向かう。その足取りは、朝よりもしっかりしていた。

 ラウルはソファに座るなり、カミリアのティーカップを自分の隣に置く。
「こっちに座って」
「しょうがないわね」
 カミリアが隣に座ると、ラウルは顔を綻ばせ、マドレーヌに手を伸ばす。紅茶を飲みながらひとつ食べ終えると、身体をカミリアに向けた。

「空腹が和らいだところで話そうか。僕の両親の、禁断の恋物語を」
 そう前置きをすると、ラウルは叔父から聞いたという両親の話を始めた。

 ラウルの母はシャムス人、父はフェガリ人だった。ふたりが出会ったのは、国境にある森の中。薬師の手伝いをしていた母は薬草を採りに、狩人だった父は、動物を狩りに行った。
 薬草採りに夢中になっていた母は、フェガリに入国していた。そんな母のすぐ近くに父が撃ち落とした鳥が落ち、彼女は悲鳴を上げて倒れた。父が母の悲鳴を聞いて駆けつけると、彼女は足をひねって動けずにいた。そんな彼女を連れ帰って手当をしたのが、ふたりの出会いだった。
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