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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
「公爵様、もう尻に敷かれてるのかい」
「歳下に見えるけど、姉さん女房なんだねぇ」
「けど、お似合いだよ」
 貴族と農民の距離の近さに驚くのと同時に、彼らの目にどんなに理想的なカップルに見られても、ラウルと夫婦になることはないという事実に、寂しさを覚える。

(どうしてこんな気持ちになるの? 私はシャムスとフェガリの交友関係をよくするための任務を遂行しているだけ。ラウルとそういう仲になることなんて、最初から望んでないじゃない)
 心の中で自分に言い聞かせると、ヘンリーに向き直る。
「流石にお嬢さんみたいな華奢な女の子に、畑を耕させるわけにはいきませんよ」
 もう20歳を越えているのに、女の子と呼ばれてむず痒い気持ちになる。だが、ヘンリーからすればカミリアは孫と大差ないのだろうと思うと、妙に納得してしまうから不思議だ。

「大丈夫ですよ。私は名家の令嬢といっても、田舎に住んでたんです。その頃は猟銃で動物を狩っていました。なので、鍬くらい平気ですよ」
「ははっ、それは頼もしい。では、お願いします。疲れたらすぐに言ってくださいよ」
 ヘンリーは物置小屋から2本の鍬を持ってくると、1本をカミリアに渡した。鍬はレイピアやサーベルとはまた違った重みがある。

「さぁ、こっちです」
 ヘンリーに案内されたのは、雑草が生えた広大な土地だ。これでは作物を育てるなど不可能だろう。
「見ての通り、うちの畑は広いですからね。収穫したら、種を蒔くまでこうして放ったらかしになるんですよ。ここ一帯を、雑草ごと耕して欲しいんです」
「雑草は抜かないんですか?」
「一緒に耕せば、しつこい雑草も生えようがないですからね。そのまま枯れて肥料になるんです」
「そうなんですね。分かりました。けど、どこから耕せばいいんですか?」
 カミリアは広大な土地を見渡した。こういった作業は端からやりたくなるが、端というものが見つからない。せめて目印でもあればいいのだが、それもなかった。
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