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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第5章 5章 陰謀渦巻く舞踏会
「分かりやすい上に風情があるのね」
 カミリアはグラスに水を注ぐと、それぞれの前に置いた。
「一応言っておくけど、休憩室には他の男と入ってはいけないよ。休憩室だけじゃない。庭の茂みや、ふたりきりになるような場所は、絶対に行かないで」
「どうして?」
「休憩室や茂みから出てくるところを誰かに見られたら、そういう仲だと思われて、おかしな噂が広がるからさ。男にそういったところに連れ込まれて、婚約破棄をされて泣いた女性を、何度も見たことがある」
 ラウルの話に、カミリアは嫌悪感で顔をしかめる。きっとか弱い女性を無理やり引っ張りこんだのだろう。そういった卑怯な男が、カミリアは許せなかった。

「まぁ君なら大丈夫だろうけど。そういえば、ハーディとすれ違ったね」
 親友の名前に、カミリアは笑顔になる。休憩室の話をして話せなかったが、ハーディの話をしたくてしかたがなかった。
「えぇ、そうね。まさかすれ違えるなんて思わなかった。舞踏会がいくつかに分かれてるってことは、騎士達もでしょう? 話せないけど、ハーディの姿を見ることができて、とても嬉しいの」
「ふたりは仲がいいんだね」
「子供の頃から、ずっと一緒だったもの」
 カミリアはハーディと過ごしてきた日々を思い出した。喧嘩をしたり、辛い目にあったこともあったが、それでもハーディは唯一無二の親友だ。

「そうなんだ。その思い出話、聞かせてくれる?」
「えぇ、もちろん」
 気弱だったハーディを騎士ごっこをしていじめる男の子達から守ったこと、湖で溺れる自分をハーディが助けてくれたこと、一緒に剣技を磨いたり、自警団に入ったことなどを、ラウルに話した。


 その頃ハーディは、廊下で立ち尽くしていた。
「嘘でしょ……?」
 心の声が、無意識に口から出てくる。それほどまでに、ハーディは放心してしまっている。
 瞼を閉じて、先程すれ違った貴族のカップルを思い返す。仮面で顔全体を見ることはできなかったが、あれは間違いなくラウルとカミリアだ。想い人と親友を、間違えるわけがない。
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