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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第5章 5章 陰謀渦巻く舞踏会
「分かりました、休憩室に連れていきます」
「あぁ、よかった。肩を貸してもらえるかい?」
「……えぇ」
 カミリアは渋々肩を貸す。アストゥートの荒い息遣いと苦しげな声が耳に届き、はやく彼を休憩室に運ばなければならないと強く思う。

「実は、体調を崩すと思って、休憩室を予約しているんだ。気分がよくなる香も焚いてある」
 廊下に出ると、アストゥートは予約していたという部屋を教えてくれる。その部屋の札は、満月になっていた。
「誰かが入っているようですが……」
「俺がひっくり返して予約したんだ。こういうことは、あまりしてはいけないんだけどね」
 アストゥートは力なく笑いながら言う。体調を崩すと分かっているのなら休めばいいのにと思いながら、ドアを開ける。

「うっ……」
 ドアを開けた瞬間、強烈な甘い匂いが部屋から溢れ出た。あまりにも強い匂いに、クラクラしてしまう。こんな匂いの中にいたら、余計に体調を崩してしまいそうだ。
「どうやら、香を間違えられたみたいだ……。悪いけど、窓を開けてくれるかい?」
「分かりました」
 部屋に入ると、アストゥートが倒れてしまった。慌てて抱き起こすと、アストゥートの息は先程よりも荒くなっていた。

「大丈夫ですか? 違う部屋に……」
「いや、ここでいい。ちょっと身体の力が抜けただけだから……。窓を……」
 一刻もはやく空気を入れ替えようと、カミリアは窓を開けに行く。だが……。
「開かない……?」
 古いせいか、窓はビクともしない。よく見ると観音開きの窓の取っ手は、糸で固定されている。

「どうして……?」
 これが罠だと悟ったのとほぼ同時に、後ろから抱きしめられる。嫌悪感で全身に鳥肌が立つのを感じた。
「引っかかってくれてありがとう、馬鹿女。こっちに来るんだ」
「いや、やめて!」
 抱きしめられたまま、ソファに引きづられる。カミリアは必死で抵抗するが、力がうまく入らない。抵抗も虚しく、ソファに突き飛ばされてしまう。テーブルの上にある香の匂いで、クラクラして力が更に抜けていく。どういうわけか、身体が内側からじんじんと熱くなってくる。
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