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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第6章 6章 光と影
『口から息を大きく吸って、吐く時は鼻からだよ』
 肺に空気を溜めていくイメージで、口から吸い、鼻からゆっくり吐き出した。それを何度も繰り返す。その間水は徐々に増えていき、手首に巻いたロープがたゆんでくる。カミリアはたゆみがなくなるまで、手首にロープを巻きつけた。

『やればできるじゃない! 溺れそうになった時は、そうやって浮くの。近くに流木とかがあったら、それにつかまって』
 子供のハーディが、とびきりの笑顔を見せて褒めてくれる。それだけで勇気が湧いてくる。
「ありがとう、ハーディ。絶対に生き残るから」



 ハーディはリュゼの部屋で頭を抱えた。
「どうしよう、私のせいでカミリアが……」
 一時は死んでほしいと思ってしまったが、それは発作的なものであって、本当に死んでほしいと思っているわけではない。ただ、少し痛い目を見て、ラウルにフラレて欲しかった。
 もしカミリアが本当に死んでしまったら、きっと後悔する。

「助けなきゃ……」
 ハーディは立ち上がり、ドアを開けようとするが……。
「どうして開かないの!?」
 ハーディは知らない。外から鍵をかけられたことを。どんなにゆすっても、ドアは開かない。
「あの女……! はやく行かないといけないのに! 誰かいないの!? ここを開けて!」
 ハーディは必死に声を張り上げ、ドアを叩いた。



 その頃、ラウルはカミリアのことが心配で仕方がなかった。リュゼにカミリアのことを話せは話すほど、彼女が気になる。途中で話を切り替えられたが、相槌を打つのが精一杯だ。
「リュゼ、やっぱりソニアの様子を見たいんだ。起こさないように気をつけるから」
「でも……」
「リュゼ、連れて行ってあげなさい。友達思いなのはいいことだが、ソニア嬢はお前の友達である以前に、ラウルの婚約者なんだぞ?」
「はい、お父様……」
 フローレス公爵が後押しをすると、リュゼはようやく頷いた。ラウルはそんなリュゼを不審に思いながら、彼女と一緒に食堂から出る。
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