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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第2章 騎士団長命令
「失礼」
 ラウルはカミリアの前に跪くと、彼女の靴を脱がせて自分の膝の上に置く。カミリアが急いで足を引くも、しっかり掴まれてしまい、びくともしない。
「あの、流石に団長の膝に足を置くのは……」
「そんなこと、気にしなくていいよ。にしても、本当に驚いたな。男尊女卑が激しいシャムスに、女性騎士がいるだなんて思ってもみなかった。それも、こんなに美しくて強い人だなんてね」
 慣れた手つきで手当をしながら褒めちぎってくるラウルに、カミリアは不快になる。
 この国では女性騎士はほとんど見かけない。今ではカミリアをはじめ、数人の女性騎士がいるが、彼女達はカミリアに憧れて入団してきたため、カミリアが騎士になるまで女性騎士は存在しなかったと言っても過言ではない。だが、騎士道に男も女もない。まして、容姿など関係ないと考えるカミリアからすれば、差別的発言に聞こえてしまう。

「騎士道に男も女もありません。容姿だって、関係ないでしょう。それに、私より団長の方が強いじゃないですか」
「僕よりも、カミリアの方がよっぽど強いと思うけど」
 柔らかな眼差しを向けるラウルに、憤りを覚える。接戦のフリをして勝たれただけでも腹立たしいのに、強いと言われて馬鹿にされている気分になった。

「そういえばこの前部屋にお邪魔した時、軍学書がたくさんあったけど、あれ、全部読んだのかい?」
 ”いい加減にしろ”と怒鳴ろうとした矢先、ラウルが話を変えてしまった。急な方向転換にカミリアは怒りの矛先を失い、少し戸惑う。気持ちを落ち着かせようと小さく息を吐き、口を開く。
「えぇ、全部読みました」
「それはすごい! カミリアは努力家なんだね。足が治るまで、その知識を活かしてみない?」
「具体的には、何をすればいいんですか?」
 カミリアの問いに、ラウルはいたずらっぽく笑う。彼が何を考えているのかは分からないが、嫌な予感だけはする。
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