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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
 カミリアは桶に沈んでいるタオルを絞ると、ラウルの顔を拭いた。一通り拭いて桶に沈めると、少し白く濁った。きっとハンカチで取りきれなかった化粧だろう。化粧をしてまで疲労を隠していたラウルを思うと、胸が苦しくなる。同時に疑問に思う。何故彼はそうまでして無理をしたのだろう?
 時期国王最有力候補だからというのが思い浮かぶが、いつもヘラヘラしている彼にそんな野心があるのだろうか?
 ドアがノックされ、カミリアの思考が停止する。返事をすると、ルナが入ってきた。

「こちらでお間違いないですか?」
 ルナは紙袋を見せながら聞いてくる。それは間違いなく、メディナからもらった薬だ。
「そう、それよ。ありがとう」
 カミリアは紙袋を受け取ると、サイドテーブルに置いた。
「あの、ソニア様……」
「鎧のことなら、医者が来てから話すわ」
 言いづらそうなルナに察したカミリアが先に言うと、ルナはコクリと頷いた。

「ここはソニア様にお任せしますね。私達使用人がラウル様の服を脱がそうものなら、怒られてしまいますので」
 ルナは悲しそうに言うと、部屋を出ていった。
「どういうこと?」
 あれだけ使用人に好かれている彼が何故怒るのか? 彼も使用人達に身体を洗わせているのではないか? だからカミリアも、初日は使用人に洗われたのではないのか? 彼と知り合って日が浅い自分が脱がせてもいいのか?

 気になることがいくつも出てくるが、汗をかいたままにしておくのは良くないと思い、シャツのボタンを外していく。シャツをはだけさせ、カミリアは絶句する。
 ラウルの右の鎖骨下には、いつかの黒髪の少年と同じ焼き印があった。
「どうして……」
 震える指先で焼印に触れると、笑い声が聞こえた。驚いてラウルの顔を見ると、彼は薄目を開けて笑っている。

「驚いた? 僕、シャムスとフェガリのハーフなんだ」
 今ではシャムスとフェガリのハーフは増えてきてはいるものの、ラウルが産まれる頃では考えられない話だ。
「驚きはしたけど、それだけ」
 カミリアはあえてそっけなく言うと、身体の汗を拭き取る。
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