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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
 有喜菜の検査は丸二日に渡って行われるので、入院ということになる。その間、紗英子は近くのホテルに泊まり込み、ずっと有喜菜に付き添った。ひととおりの検査が終わった二日めの夕方、院長室に呼ばれ、院長立ち会いの下、担当となる若い医師から説明を受けた。
 結果として、有喜菜は子宮、卵巣ともに至って正常であり、三十六歳の女性としてはごく平均的な健康状態であるとの診断が下った。紗英子の卵子の方も状態はすごぶる良いとはいえないけれども、十分、体外受精に使えるとのことで、後は紗英子の夫である直輝の承諾がありさえすれば、体外受精は行えるという事実が淡々と担当医から告げられた。
 紗英子が気になるのは、やはり有喜菜が流産を繰り返していることであった。
 だが、これには院長自らが語った。
―宮澤さんの場合、二度の流産とはいえ、二度目は不幸な事故によるものだとしか考えられません。また死産は、お腹の赤ちゃんに先天的な心臓疾患があったためと考えられます。
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