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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
 初回の診断では概ね、そのようなことが行われた。既に年の瀬に入り、病院そのものも年末年始の休みに入ることもあり、次回の受診は年明けに決まった。
 その年の正月は、紗英子にとって特別な想いで迎えるものとなった。泊まりがけでS市に赴くのだから、当然、夫の直輝にもクリニックに行くことは話している。しかし、当初から代理母出産に反対している夫は、紗英子の話にも気乗りしない様子で〝そうか〟と頷くだけであった。
 というよりも、代理母を使って子どもを得ようとする話をして以来、直輝はまるで紗英子を見知らぬ他人を見るような眼で見るようになった。これが、あの子宮全摘した直後、紗英子を不安げに見守り、心から労ってくれた夫と同じ男か―、そう疑わずにはおられないほど醒めたまなざしに、紗英子ですらたじろぐことがあった。
 そんな時、紗英子の中をちらりと後悔に似たものがよぎるのだった。
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