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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
 有喜菜は付き合いも長い分、直輝と紗英子の性格を知り抜いている。紗英子もまた、直輝以外の男の子どもを代理母を使ってまで望むような女ではないのだ。恐らく、紗英子がここまで子どもを持つことに拘るのも、直輝の血を引く子どもだからこそなのだ。紗英子にとって、他の見も知らぬ男が、紗英子自身の子どもの父親であってはならないはずだ。
 有喜菜が一緒ではなかったその日、直輝は精子を採取する処置を受けたのだろう。紗英子は最初から、直輝に代理母が有喜菜であることを打ち明けるつもりはないと断言していた。
 それに関しては、有喜菜は今のところは異存はなかった。直輝は何事もごり押しを好むタイプではないし、ごく常識的な考えの男だった。代理出産などという人為をはるかに越えた出産法について、どう考えているかは想像がつくし、紗英子と直輝の共通の友人でありながら、それを引き受けた有喜菜自身をもさぞ常識外れの信じられない女だと蔑むだろう。
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