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甘い復讐
第14章 公開処刑4日目 夜
緑色の仮面の紳士は、その悲痛な言葉を無視するかたちで、今度はサーベルを振りかぶり、右脇腹から左下に、途中臍を通り斜めに切り裂いた。

「んっ!」


痛みが身体を走る。

だが、傷は浅く、皮膚を傷付けたのみで、深くは達していない。


緑色の仮面の紳士は、再び振りかぶり、左脇腹から右下に、さっきとは逆に切り裂いた。


「んっ!」


そして、そのまま次は左脇腹から右脇腹に、臍を通って一文字に、最後は、鳩尾辺りから下腹部の陰毛辺りまでを、縦に切り裂いた。


どれも、皮膚のみを傷付けただけ、しかも確実に臍を通って切り裂いている。

緑色の仮面の紳士が、余程の腕を持っていることが、ここからも分かった。


観客からは、大きな拍手が巻き起こった。


「続けていきます。」


緑色の仮面の紳士は、サーベルを構え直してから、再び振りかぶった。


ズッ!


「くっ!!」


最初に斬った右脇腹から左下に向かう傷を、そのままなぞり、今度は筋肉まで達する深さで切り裂いた。


「おぉー!!!」

観客から歓声と拍手が起こる。


緑色の仮面の紳士は、そのまま左脇腹から右下に斜めに斬った後、十字の傷も同じようになぞって斬った。


マルセルは斬られる度に小さく圧し殺した呻き声を上げ、耐えるしか無かった。


傷口からは血が溢れだし、マルセルの足元には既に血溜まりが出来ている。


緑色の仮面の紳士が、再びサーベルを構えた。

「次。」

次はもっと深く斬られる。
マルセルの顔は恐怖で青ざめている。

「…はぁ…はぁ…はぁ…。」

しかし、それでも、荒い息をしながらマルセルは、じっと緑色の仮面の紳士を睨んで、視線を離さなかった。


大勢の前で、腹を刺され射精するという辱しめを受けたにも関わらず、死ぬことすら出来ない。
ならせめて、何度辱しめを受けても、下を向きたくない。


青ざめながらも、堂々としたマルセルの姿を見て、緑色の仮面の紳士は、少し嬉しそうに口元を綻ばせた。
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