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Memory of Night 2
第13章 投影

 入ってきた男は予想通り、ローズのマスターこと三浦亮だ。

「ーーお疲れ様。とてもステキだったよ」

 そう言って、抱えていた花束を差し出してくる。それは真っ赤な薔薇だった。

「……わざわざ、こんなの用意しなくていいのに」

 悪態をつきつつも、差し出されるものを無下にはできない。春加は立ち上がり、花束を受け取った。

「ありがとうございます」

 亮は室内を軽く見渡し、ちらりと笑顔を見せる。

「ここじゃ煙草は吸えないよ?」
「……知ってますよ、もちろん。いいんですよ、一人になれる場所を探していただけなんで」

 一人になれる場所、というのを強調して伝える。こっそり入ってきたはずなのに、たった五分で見つかってしまうとは。考えを先読みされている気がして、不愉快極まりなかった。

「用はそれだけですか?」
「冷たいねぇ。何をそんなに苛ついてるんだい?」
「……疲れただけですよ」

 春加は再び椅子に腰を下ろし、両手首を軽く回した。たまにポールに触れていたとはいえ、お遊びのようなものだった。本格的な演技をするのは約三年ぶりで、そのブランクは大きい。
 たった数日の付け焼き刃の練習でどうにかなるものではない。
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