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Memory of Night 2
第47章 春の訪れ

 ぬぐったばかりなのに、千鶴の目からまた涙が溢れる。それはもう、悲しい涙ではなかった。
 とぼとぼと坂を下り、車の前まで戻った。手の甲で涙をぬぐう。
 助手席でスマホをいじっていた宵が、顔をあげた。
 千鶴の姿が視界に入るなり、わずかに灰色の目を見開いたが、特に何も言わなかった。
 千鶴も無言で運転席へと乗り込み、車を発進させる。

「ーー母さん、いた?」
「……アホか、いるわけないだろう」

 宵は笑った。
 それが千鶴の返しに対してなのか、酷く掠れて聞き取りづらい鼻声に対してなのかはわからなかったが。
 真っ直ぐに山道を走っている時、ふいに何かに呼ばれた気がして千鶴は後ろを振り向いた。
 ほぼ一緒のタイミングで、宵も後方を振り向く。

「また来いってさ」
「……は?」
「志穂さんに車で連れてきてもらった時も、一人で駅から歩いてきた時も、なんか帰りはいっつも『呼ばれ』るんだよねー」

 『呼ばれ』る。その感覚がたった今千鶴にもわかった。声や言葉ではない何か。それでも名前を呼ばれたような気がしたのだ。

「お盆も乗せてきて、墓参り」
「あたしはおまえの都合のいいアッシーじゃないんだよ。今度からはタクシー代取るからな」
「……ケチ」

 二人を乗せた車が、農道を走っていく。そんな場所ですら、千鶴には美しく見えたーー。
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