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Memory of Night 2
第22章 交渉

 再び亮は前を向く。

「もう十年近く前だっけ、ハルちゃんを連れ戻しに店に殴り込んできた、とても綺麗な人。宵くんが彼女の子だってわかって僕も興味が湧いてね。……もう一度会ってみたくなった」
「……」

 春加は窓の外を見やる。
 あの日から、もうそんなに月日が経つのかと思う。

「一緒に住んではないみたいだね、お母さんと。恋人と一緒にいるんだね」
「……そうだな」

 春加は亮を見なかった。表情や声色、口調、間、自分のそういう部分から、いつも心を読まれてしまう。それが嫌だった。
 唐突に亮が笑い出す。

「この話題は嫌? ーーあの時も、君は僕に何も話してくれなかった。彼女のことも、彼女と君の関係も」
「……」

 春加はだんまりを決め込んだ。ごまかしも言い訳も亮には通用しない。だったら言葉を発するだけ無駄だ。貝のように、ただ黙ってだけいればいい。
 雨は降り続く。信号で停まると、わずかだが雨音も聴こえた。少し、強くなったのかもしれない。
 ーー戻ってこい!
 彼女の怒声が蘇る。
 桃華はずっと、綺麗な場所にいたはずだ。いつもそう。ずっとそうだ。
 金と情欲にまみれた場所で、肌を見せ、男のものをどうこうしようとしていた自分はさぞ汚らわしく見えただろう。
 桃華に差し出された手を、どうしても掴めなかった。
 やがて痺れを切らしたように自ら春加の手首を掴み、テーブルの下から引きずりだされた。

「やめて、離して……っ」
「こんな店、すぐ出るぞ!」 
「離せよ……っ!」

 春加は桃華の手を振り払った。

「ーー……」

 罵声を投げつけて、彼女を追い返した。なんて言って帰らせたのか、思い出したくもなかった。
 ーーそしてそれが、春加が桃華を見た最後だった。
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