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Memory of Night 2
第1章 プロローグ

 女性の顔が、一瞬のうちに恐怖に歪んだ。
 レインコートを身に纏った人物は、一瞬だけ同じ瞳を女性に向けて、そこを後にした。
 もうこの葬儀場に用はなかった。
 もともとここを訪れたのは、夫婦の死が事実なのかを確かめるため。
 目的はそれ一つだけだった。
 ところどころに水の溜まったコンクリートの上を歩く。
 あたりは静まり返っていた。
 雨粒が地面にぶつかる音と、地を踏みしめる自分の足跡しか聞こえない。
 今は、十一月の半ば。
 ただでさえ冷え込んだ外気の中、雨の冷たさが身に染みた。濃い土の匂いが鼻をつく。
 灰色に染まった景色の中で、同じく灰色の瞳を持った少年の姿が思い浮かんだ。
 自分はその少年を知っているはずなのに、不思議と名前は出てこなかった。

 ――カミヤヨイ。

 ようやく名前を思い出したのは、それから数日経ってからのことだ。
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