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Memory of Night 2
第26章 承諾書

 恋人がいると伝えてしまえば楽なのだが、春加にそれは絶対するなと釘を刺されていた。
 というのも、ポスター撮影を控えている今土方にヘソを曲げられたら非常に困るから、だそうだ。同じ理由で、接し方も気を付けろと念を押されている。

(めんど……)

 その一言に尽きる。

(でも破格の金貰えるし)

 ポスターの撮影さえ終われば、ここまで気を遣う必要はない。あと二ヶ月ちょっとの我慢だ。

「お酒、何飲まれますか?」
「そうだなあ、カルーアミルクがいいかなあ」
(……女子かよ)

 もともと土方は甘い酒を好むが、カクテルの中でも特に若い女性からの注文が大半の商品だった。

「作ってきます、お待ちください」
「君が作ってくれるのかい?」
「はい」

 嬉しくそうに綻ぶ顔すら、なんだか鬱陶しく見える。
 インスタント珈琲でもあれば、粉を大量に入れて苦み増し増しで作ってやるのに、なんて頭の中で妄想しながら踵を返しキッチンに向かおうとすると、不意に呼び止められた。
 振り向くと、土方は真剣な面持ちで言う。

「宵くん、改まって言うのも変かもしれないが、今回本当にありがとう」
「……? お酒ですか? ドリンク作りも仕事なので」
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