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Memory of Night 2
第26章 承諾書

 他の客の時もしているし、改まって礼を言われることではない。
 だが、土方は笑った。

「違うよ、その話じゃない。ポスター撮影の件さ。君がようやく僕の願いを受け入れて、縛らせてくれると聞いて、ね。しかもそんな大切な撮影のタイミングで、なんて、とても光栄だよ。和装に、緊縛。素敵な画(え)になるよう、全力を尽くすからね、任せたまえ」
「…………」

 何を言っているのだろうか。土方の話にも感謝の言葉にも身に覚えがなさすぎて、言葉も出ない。
 和装に、緊縛? そこに土方? 土方は、場所を提供してくれるだけではなかったのか。

「緊縛は芸術だからね。それ自体が作品であり、する側とされる側が一体となり……」

 熱く語り出す土方を無視し、キッチンへと戻る。
 春加の姿はなかった。
 フロアに出て全体を見渡すが、同じく春加は見あたらない。
 おそらくはスタッフルーム。宵はそこへと走る。
 ドアを開けると、彼女は一人テーブルに座りタバコを吸っている。

「あ、宵。一本吸……」
「吸わねーっつーの!」

 苛立った気分のまま両手でテーブルを叩く。がたりと大きな音が響いたが、春加は顔色一つ変えずに黒塗りの瞳で宵を見上げるのみ。
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