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Memory of Night 2
第29章 桃華

 スタッフルームを飛び出していってしまった春加の背を見送り、宵は小さくため息をついた。つい、ムキになって問いつめてしまった。
 思い返せば、春加が自分に向ける視線や言動に違和感を覚えたことが何度かあった。
 たとえばドライブに連れまわされた夜。
 春加は自分に、一夜限りのセックスの経験なんてないだろうと言った。金で関係を持ったこともない、恋人に大事に抱かれたことしかないだろう、と。
 そんなプライベートな話、彼女とは一度もしたことがなかったのに、なぜか春加は決めつけるようにそう言った。
 皮肉めいた、どこかなじるようなあの時の目。今になって思う。それは自分に向けてではなく、自分とよく似た顔立ちをした桃華に対して向けられていたものではなかったのか。
 宵のアパートに初めて来た日もそうだ。一台分の駐車場をずっと借りている理由を聞かれ、母親と昔住んでいたことを伝えた時。今は別で住んでいるけれど、たまに来るから駐車場は借りたままにしていると説明した時の、春加の酷く強張った表情はよく覚えていた。そのまま縁石に車を当ててしまったのも、動揺していたせいだろう。
 そしてそのあと、すぐに母親の名前を尋ねられた。
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