この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
Memory of Night 2
第5章 進路

 面談の時間は五時からのはずだったが、彼が来たのは五時を三分ほどまわった時だった。

「すみません、遅れましたー」

 まったく悪びれない調子で教室に入ってくるなり、席に座りもせずに進路調査の紙を手渡そうとしてくる。

「こらこら、順序が違う。まず座りなさい」

 彼の保護者は来ない。それは事前に聞いて知っていた。彼の本当の両親は、彼が十歳の時に交通事故で両親を亡くしている。初めて担任になった去年、学年主任から聞かされていた。
 その後養子として引き取られていることや、その育ての親である女性が去年まで入院していたということなど、担任になってから把握していった事情も多い。倉木自身、宵を病院に一度送り届けた経緯があった。
 宵の家庭の事情をある程度把握している分、彼と話すときには少し気を遣う。

「出すだけでいいじゃん、この紙。どうせ就職だし、わざわざ面談することある?」
「ある。はい、あと十二分しかないから早く座る」

 腕を組み促すと、宵はしぶしぶ倉木の正面の席に腰を下ろした。
 進路の話を始める前に、倉木にはどうしても言っておきたいことがあった。

「お義母さん、退院したんだってね。……本当に良かった、おめでとう」
「ああ、うん、ありがとうございます。車出してもらったり、先生にはかなり世話になったのに、ちゃんと言ってなかったっけ?」
「そんなんはいいけどさ、もうご病気の方は」
「平気。病院ももう定期検診くらいしか行ってねーし」
「……良かった、本当に」

 倉木は安堵の微笑を浮かべた。
/606ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ