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Memory of Night 2
第32章 雪

 車が信号で引っかかり、停車する。

「……あんたが嫌ってんのは、ほんとは俺や母さんじゃなくて、あんた自身なんじゃねーの?」

 静かに問いかけてくる宵の声は柔らかかった。跳ね返すこともできず、その姿を視界に入れることもできずにいた。
 ずっと心の奥に押し込めていたものに触れられてしまいそうで怖かった。
 その通りだと認める以外なかった。ずっと自分が嫌いだった。自分の選択を後悔ばかりしていた。
 だから捨てたかったのだ。新しい自分になって、遠くに行って、また一からやり直したい、そんな妄想ばかりしている。
 ーーあの雪の日。亮に出会う前に戻りたい。
 酒や煙草や男に依存ばかりしている自分を、丸ごと無かったことにしたかった。
 春加はハザードをつけ、路肩に車を停車させた。視界が歪み、そのまま運転を続けるのが難しかった。広い道なので、他の走行車の妨げにはならないはずだ。
 ハンドルに腕をまわし、抱え込むようにして顔を伏せる。窓の外に視線を向けた。
 ロック調の曲が車内に流れる中、不意に宵の声が響いた。

「……ごめん、あんたを追いつめたかったわけじゃないんだけど」

 春加は緩く首を振った。声を出すと、嗚咽が漏れそうだった。
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