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Memory of Night 2
第32章 雪

「あの緊縛好きなおっちゃんの相手だって、喜んでしてたと思う。ーー晃とも最初はそうだったよ。金くれるっていうから、あいつの家に行った。……母さんは知らねーけど、俺はあんたが想像してるような綺麗なセックスばっかじゃなかったよ」
「……なんでそんなに金が欲しかったの?」

 窓の外に向けていた顔を、宵が春加の方へと向ける。いつの間にかイルミネーションは終わっていた。

「それは教えねー。あんたが母さんとの関係を教えてくれるまでは」
「あっそ」

 車は十分もせずに宵のアパートに到着した。玄関の明かりがついている。すでに晃は予備校から帰ってきているらしい。時刻はすでに十時半をまわっていた。

「今日はさんきゅ。チャリ明後日のバイトの時乗って帰る」
「はいよ」

 宵は車を降りたあと、何かを伝え忘れたかのように動きを止め、振り向いた。

「ーーあんたは自分のこと嫌いかもしんねーけど、俺はあんたを嫌いじゃない。じゃ、おやすみ」
「……おやすみ」

 ドアが閉まる。
 春加は車を発進させながら、口元に笑みを浮かべた。

「……セリフだけ聴くとまるで口説き文句だな」

 春加は右手に隠し持っていたスマホを手に取り、録音にしていたのを止めた。
 ずいぶん心の中を引っ掻き回されてしまった仕返しに、これくらいのイタズラは許されるだろう。
 あとで切り取って晃に送りつけてやろうと企みながら、帰路についた。心なしか、気持ちは晴れやかだった。
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