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Memory of Night 2
第5章 進路

 ーー金、欲しいんだよね。
 薄日の差す保健室でそう言った宵の態度には、どこか自暴自棄にでもなっているような危うさがあった。
 彼が一年の頃隠れてしていたバイトの話や、生徒との不純行為により金銭のやりとりをしていたらしいことも、噂として時折倉木の耳に届いていた。上に言わずそこで留めていたのは、彼の身の上に対する同情もあったのかもしれない。
 せがまれるまま渡した金をどう使ったか、彼に直接尋ねたことはなかった。けれど、予想はできる。

「宵くんはさ、学校で授業を受けている時以外の時間を、一番誰のために使った?」
「時間?」
「そう、時間。別に君のプライベートをあれこれ詮索したいわけじゃないよ? ただ、ちゃんと自分のために使えてたのかなって思ってさ」

 倉木は宵の顔を改めて見つめる。
 担任を受け持ったばかりの頃は、彼の顔色の悪さが気になっていた。あまり寝ていない日も多かったのだろう。

「……どうだろ。そんなん考えたことねーや」
「だろうね。君、頭で考えるより行動しそう」

 倉木は少し笑ってから、ふぅと小さく息を吐いた。

「ま、君の進路は君のものだからね。私の意見はさらっと聞き流してくれていいよ」

 そこで倉木は腕時計を確認した。そろそろ面談の時間も終わる。

「先生が大学で一番楽しかったのって何? 酒?」

 倉木はその質問に、一瞬迷う。一応用意してある模範の回答は幾つかあった。真面目に大学受験を目指す生徒のための、教師としての模範回答が。しかしさすがに今の話のあとじゃ嘘くさい気がして、結局本当のことを答えるのだった。

「飲みのあとのワンナイト、かな。ーー秘密ね」

 宵は灰色の瞳を大きく見開き、すぐに吹き出した。肩を揺らし笑っている様子は年相応の少年のもので、その血色の良さにも倉木は安堵するのであった。
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