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Memory of Night 2
第33章 撮影旅行前夜

「亮は何を願うの?」
「僕? そうだなあ……」

 わずかに沈黙があった。お願い事を考えているらしい。
 商売繁盛。店にまつわることの一択かと思ったが、短い時間考えて、告げられた内容は意外なものだった。

「ーー君に春が、訪れますように」

 春加は一瞬言葉に詰まった。
 春はいろいろな喩えとしてよく使われているが、一般的なモチーフとして使われるのは恋愛絡みなことが多い。
 春加が亮に好意を持っていることはもちろんわかっているのにその願い事を口にするのは、悪意や皮肉にしか受け取れなかった。

「……性格悪いな」
「違うよ」

 下がってしまったトーンで呟くと、まるで心を読まれてでもいるかのように亮から否定の言葉が投げかけられた。

「最近、沈んでることが多いから」
「別に」
「ーー可哀想に。まだ、桃華さんの亡霊は君の隣にいるのかい? いつまで?」
「は? どういう……」
「どうして宵くんに声をかけたの?」

 春加の言葉は聞き入れず、かぶせてくる。

「最初は本当に、好意があるのかと思った」
「あいつに? ……まさか」

 春加は失笑する。ありえない。もう何年も亮以外にそんな感情抱いたこともなかった。
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