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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

 土方の別宅まで、実際三十分もかからなかった。二十分ちょっとだろうか。着きましたという運転手の声で、暖かな車内から外へと降り、目の前の光景に、一同はただただ呆然と佇むことしかできなかった。

「…………は?」

 と宵。

「は、春加さん、これ……」

 ガクガクと指を震わせ、目の前の建物を指す従業員の女の子。

「ここが土方さんちの別宅」

 春加の言葉に、そこにいた誰もが言葉もなく唖然としていた。

「家じゃねーじゃんこんなの、屋敷だぞ! 屋敷!」

 宵が声を大にして叫ぶ。

「五億は下らないんじゃないかなあ、勘だけど」

 一方の晃は冷静に一言。ぎょっとしたように他のスタッフ達がおののいた。
 ふいに、寡黙な運転手が言った。

「だいたい当たってます。すごいですね。ーーあ、そういえば、申し遅れましたね。僕は土方さんの使用人をしております、板東(ばんどう)と申します」

 運転手は深々と頭を下げる。
 使用人、という単語にも馴染みはなかったが、屋敷を見てしまった宵たちにはもうそのデカさ以上の驚きはないのであった。
 土方の別宅。それは『別宅』と形容するにはあまりに立派で、敷地も含めて広く、大きかった。
 まず、バスが横並びで三台は通れるような門があった。超える時に窓の外にちらりと見えたが、何かの見間違いかと思っていた。遥か後方に見えるのはやはり門なので、通ってきたのは巨大な門で間違いないらしい。
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