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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

「あ、そうだ。今さら言わなくてもわかってると思うけど、土方さんの前ではイチャイチャすんなよ。二人が付き合ってることバレると厄介だから。撮影が終わるまでは何がなんでも隠せ。絶対だぞ」

 バスの中、開口一番春加が言う。
 乗り込んだ順という流れで、春加、宵、晃は三人で、バスの一番後ろの五人用シートに座っていた。
 宵はうっとうしそうな視線を春加に向ける。

「…………めんどくさ」

 本音がぽろり。

「ここまで来て白紙にされたら笑えないだろ。場所も、機材も、人も、いろいろ協力してもらってんのに」
「土方さんて、緊縛イベントの時に前に立ってた人でしょう? この前君がお酒を作ってあげてたあの」

 隣に座る晃の口調はあからさまに不機嫌そうだった。
 宵はぎくりとし、宥めようとするが。

「そうそう、宵を縛らせろってうるさいあの人。バイト始めたての頃から、ずーっと猛烈なアプローチ受けてて……むぐ」
「あーもうあんたうるせーってっ」

 ずっと晃には大事なところを隠し、ごまかし続けてきたのに、春加にいっきにバラされてしまい、宵は焦る。とっさに春加の口を手のひらで塞ぐが、遅かったようだ。

「ふーん」

 晃の声はいつもより低い。
 また不機嫌になってしまうかと思われたが、そうでもなかった。

「わかった。この二泊三日の間、あくまで『友達』の距離感でいればいいんだろ? ……もうハル姉の挑発には乗らない」

 冷静な調子で晃が言う。どうやらまた春加の挑発だと思ったらしい。
 今回は春加の発言に誇大や嘘は一つもなく、全て本当のことなのだが、それは訂正しないでおいた。

(黙っとこ)

 口は災いのもと。そんなことわざを思い出しながら、宵はほっと胸を撫で下ろした。
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