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Memory of Night 2
第36章 洞穴

「何してんだよ! 早くそっから出ろ!」

 パラパラと、たくさんの欠片が落ちて砂煙が舞った。

「春加! こっち来い! そっから出ろ! 春加……っ!」

 宵の声が届いてないなんてことはありえない。壁に反響し、うるさいぐらいのはずだ。
 それでも洞穴の奥で佇む人影は、微動だにしない。まるで一人だけ、別の世界にでもいるようだった。

「はる……っ!」

 その時だった。
 音が止まった。ふいに訪れた、静寂。
 ーー収まったのか?
 崩落はせず、洞穴はそのままの形で持ちこたえたのだろうか?
 だが、次の瞬間今までとは比べものにならないくらいの爆音が鳴った。岩や土が崩れる、地鳴りのような音。
 砂や土の塊が幾つも目の前に落ちてきて、宵は何歩か後ずさった。

「崩れる……! 春加……っ!」

 洞穴の奥。入り口と同様に、塊が今にも落ちそうだった。
 春加の姿がぼんやりと見えた。
 崩落しかけた洞穴の中で、彼女は頭上を虚ろな眼差しで見つめていた。

「……っ」

 それはもう、理屈じゃなかった。
 轟音が響く。アメリアが英語で何か叫んでいるが、内容など一つも入ってこなかった。
 宵はそのまま洞穴に飛び込み、春加目がけて落ちてくる塊から庇うように、春加の体を弾き飛ばしていたーー。
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